バルセロナの街並みに異彩を放つ「3本の煙突」。どこから見ても圧倒的な存在感を放ち、「労働者のサグラダファミリア」と呼ばれることも。2011年に火力発電所が閉鎖された後も、この3本の煙突とタービン室は取り壊されることなく、バルセロナの産業遺産として残されています。さらに再開発の計画もあり、未来への期待が高まる場所です。
1973年に建設された火力発電所の3本の煙突

「3本の煙突」はバルセロナ県バルセロナ市に隣接するサント・アドリアー・ダ・バゾス市の中心部を流れるバゾス川の北側にあります。ここは1973年に建設された、かつての火力発電所。各煙突は独立して稼働し、出力はそれぞれ350MW。その中のひとつは電力の必要量に応じて稼働していました。
3本の煙突:🇪🇸Les Tres Xemeneies
サント・アドリアー・ダ・バゾス市:カタロニア語 Sant Adrià de Besòs、🇪🇸San Adrián de Besos

「3本の煙突」の建物全体の高さは200メートルに及びます。建設当初は90メートルの煙突が、ボイラーを収める90メートルの建物の真上に設置されました。つまり、建物の全長は180メートル。しかし、バルセロナの都市圏の高層気象観測で、気温の逆転層が170〜190メートルにあることが判明。このため煙突の高さを20メートル増やし、結果として200メートルになりました。煙突先端の細い金属部が、あとから追加されたものです。
3本の煙突を産業遺産に

2011年に最後の煙突が稼働を終え、火力発電所は閉鎖されました。その広い敷地内に残された「3本の煙突」。この発電所を所持していた電力会社 エンデサは、発電所全体の解体を計画していました。しかし、この「3本の煙突」を産業遺産として残したいという市の強い要望が。そのため、解体されずに残されました。

火力発電所跡の広大な敷地は、ぐるりと壁で囲まれています。その中央にそびえ立つ3本の煙突は、コンクリートのオブジェのようです。労働者のサグラダファミリアという呼び名が頭をよぎります。

現在この地域では、環境に配慮した都市再開発への取り組みが行われています。そして「3本の煙突」とタービン室を再利用するためのプロジェクトも進められています。すでに隣接地にはモダンなマンションも建設されています。広々とした海に面したこの土地と建物が、この地域に愛される文化施設として活かされる日が楽しみです。
バルセロナの絶景スポット、ブルケンズ・デル・カルメルからの眺め

これは、バルセロナを一望できる高台、スペイン内戦時の高射砲陣地跡「ブンケルズ・デル・カルメル」から眺めた写真です。「3本の煙突」が巨大な建物であることが一目でわかります。青い海と空を背景に、静かにそびえ立つ「3本の煙突」。その姿は、まるで自身の存在を誇示するかのようです。実際、ガウディのサグラダファミリアよりも高く、バルセロナで最も高い建築物でもあります。
バルセロナの産業遺産・3本の煙突の海岸沿いの周辺写真
バルセロナの3本の煙突を中核とする、産業遺産の再利用プロジェクトが進む中、2018年3月には土地の除染作業が完了。かつて環境汚染に苦しんだ地域でしたが、今ではすぐ隣にモダンなマンションが建ち並びます。そして、その前の海辺では、青い海で海水浴を楽しむ人の姿も。そのため、バルセロナの3本の煙突とタービン室の変わりゆく姿に引き続き注目していきたいと思います。

所在地:08930 Sant Adrià de Besòs, Barcelona, Spain
アクセス:Sant Adrià de Besòs駅から徒歩で5分ほど。
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