更新日2025-03-06   公開日2021-11-24

Latona Fountain ラトナの噴水

オウィディウスの変身物語(Metamorphoses by Ovid)のラトナ神話に由来するラトナの噴水。ドイツの大学でラテン語の単位を取得する際の必須課題本だった「変身物語」。ラテン語をドイツ語にひたすら翻訳していた日々を思い出します。

アポロとダイアナの母ラトナ。彼女はジュピターの愛人としてアポロとダイアナを身ごもりました。そのため、ジュピターの妻ユーノーから国外に追放されます。出産後もさらに逃亡を続けるラトナ。ある村で池を見つけたラトナは、喉の渇きを癒すために池の水を飲もうとします。すると、ユーノーの命令に従う農民たちが寄って来て、村から立ち去るよう迫ります。さらには池に飛び込み、澄んでいた水を濁らせて飲めないようにします。悲しみと怒りからラトナが天に願うと、その農民たちはカエルに変えられてしまったという神話です。

大理石のラトナ像を囲む金色の農民とカエル

ラトナの噴水 ヴェルサイユ宮殿

ヴェルサイユ宮殿にあるラトナの噴水には、中央に大理石でできたラトナと子供たちの像が設置されています。そして、その周りを囲むように配置された金色の農民とカエル。これらは、すでにカエルになってしまった農民と半分変身しかけている農民たちの姿です。カエルや農民の口からは、ラトナに向けて水が噴き上がります。ラトナの神話をもとに「王に逆らうべきではない」という意味が込められた噴水です。


ヴェルサイユ宮殿と太陽王ルイ14世を夢見たルードヴィッヒ2世

Schloss Herrenchiemsee

オーストリアとの国境に近い、南ドイツのバイエルン州にヘレンキームゼー城と呼ばれる宮殿があります。ドイツ語では Schloss Herrenchiemsee。日本語では「ヘレンキームゼー城」と訳されることが多いようです。しかし、同じ「お城」でも中世に建てられた防護目的の強い「Burg」ではなく、「Schloss」なのでヘレンキームゼーは広く美しい庭園に囲まれた豪華な住居=宮殿です。

ヘレンキームゼー城のラトナの噴水

ラトナの噴水 Herrenchiemsee

この宮殿は、美しいキーム湖に囲まれたヘレン島にあり、南ドイツの観光名所のひとつです。
また、ヴェルサイユ宮殿の影響を受けたルードヴィッヒ2世が建設を命じたことでも知られています。そのため、規模は小さいものの、ヴェルサイユ宮殿とほぼ同じ場所にラトナの噴水も設置されています。写真はヘレンキームゼー城のラトナの噴水です。

尚、ルードヴィッヒ2世の死後、宮殿は一部が未完成のまま残されています。このラトナの噴水のカエルや農民たちも、ヴェルサイユ宮殿の噴水のように金色に輝く予定だったのでしょうか。王として絶対権威を誇り、「太陽王」と呼ばれたルイ14世に対し、ルードヴィッヒ2世は自らを「月の王」と呼んでいました。

南ドイツの観光地、キームゼーとヘレンキームゼー城への日帰り旅行の記事は下記リンクから。
ドイツ|ルードヴィッヒ2世のヘレンキームゼー城を日帰りで見学

(ラトナの噴水 撮影日:2017年8月11日)

<ヴェルサイユ宮殿 ラトナの噴水/Château de Versailles Latona Fountain>

<ヘレンキームゼー城 ラトナの噴水/Schloss Herrenchiemsee Latona Brunnen>