更新日2025-03-11   公開日2020-09-21

南ドイツのドナウ川沿いにあるウルムは、世界一高い塔のあるゴシック建築のウルム大聖堂やアインシュタインの生誕地として知られています。ドナウ川に面したレンガ造りの城壁、美しい中世の街並みが残るフィッシャーフィアテル、宿泊できる15世紀の傾いた中世の木組みの家など見どころもたくさん。ウルムの斜塔と呼ばれる「肉屋の塔」や「ウルムの雀」にまつわる伝説やドイツ語の「ウルム早口言葉」と共にご紹介します。


ウルムっ子自慢の大聖堂!ウルマー・ミュンスター

ドイツ ウルム のミュンスター

「ウルムで、ウルムの周りで、そしてウルム周辺一帯で (In Ulm, um Ulm und um Ulm herum)」というドイツ語の早口言葉をご存じですか? この早口言葉と同じくらい有名なのが世界一高い塔を持つウルム大聖堂です。

ウルム大聖堂はドイツ語で「ウルマー・ミュンスター(Ulmer Muenster)」。一方、司教がいるケルン大聖堂は「ミュンスター」ではなく「ドーム(Dom)」と呼ばれます。

ドイツ ウルム のミュンスター

ウルムっ子自慢のミュンスターの塔は、高さ161.53メートル。世界一高い塔を持つ大聖堂として知られています。

ドイツのユネスコ世界遺産・ケルン大聖堂の塔は2つあり、南塔が157.31メートル、北塔が157.38メートル。ウルムのミュンスターのほうが約4メートル高いため、ウルムっ子は「ケルンの大聖堂より塔が高い!」と誇ります。

晴れた日に塔に登ると、ユネスコ世界ジオパークのシュヴェービッシェ・アルプ(Schwaebische Alb)を一望できます。ドナウ川とオレンジ色の屋根が並ぶ美しいウルムの街並みとのコントラストも壮麗。長い螺旋階段と足がすくむような高さに耐えられる方は、ぜひ挑戦してみてください!

ウルム大聖堂の歴史

ドイツ ウルム のミュンスター
Konzert im Ulmer Münster 提供元:Ulm/Neu-Ulm Touristik GmbH

ウルム大聖堂の建設は1377年に始まり、1890年に世界一高い塔を持つ大聖堂として完成しました。内部には20,000人を収容可能。これは当時のウルム市民の数をはるかに超える規模でした。

巡礼者フェリックス・ファブリは1488年の記録の中にこう記しています。「司教が在任する多くの大聖堂(ドーム)よりも大きく、光があらゆる角度から差し込みどの教会よりも美しい設計。そして、51もの祭壇がある。毎日多くの子供が洗礼を受け、ウルム市民の寄付で建てられた大聖堂…」。

<ウルム大聖堂の基本情報>
名称:Ulmer Muenster
住所:Muensterplatz 1,89073 Ulm


ドイツのドナウ川沿いに続くウルムの城壁

ドイツ ウルムの城壁

バーデン=ヴュルテンベルク州のウルムと、バイエルン州のノイ・ウルムの州境にはドナウ川が流れています。ウルムの街並みと大聖堂を眺めるなら、対岸のノイ・ウルムからがおすすめ。ドナウ川沿いに続く古いレンガの城壁も一望できます。

写真右側の茶色い屋根の塔は、1340年に建てられた高さ36メートルのウルムの防衛塔。「肉屋の塔(Metzgerturn)」の名で親しまれています。北西に3.3度、2.05メートル傾いていることから「ウルムの斜塔」とも呼ばれます。

その昔、ソーセージにおがくずを混ぜてかさ増しした肉屋たちがこの塔に閉じ込められました。 ある日、役人が来ると罰を恐れた太った肉屋たちた慌てて部屋の角に逃げ込み、塔が傾いてしまったという言い伝えが残っています。

ドイツ ウルム の城壁

ドナウ川沿いに続くウルムの城壁の上は、眺めの良い歩道になっています。美しいドナウ川の流れや、城壁沿いのお店を眺めながら散策するのもおススメです。


南ドイツのウルムと言えば雀(すずめ)

ドイツ ウルム の雀

ウルムの街中を歩いていると、本屋やホテル、音楽学校など様々な場所で雀の彫刻を見かけます。

昔、ウルムの市壁内に建物を建てるため、大量の木材が必要となりました。しかし、横積みした梁を乗せた荷車は狭い城門を通れません。市長も判事も前例がないからと解決策を見つけられません。さらには、城門を壊すべきかと悩みます。その時、塔の上まで器用に藁を運んで巣作りをしてる雀からヒントを得た人が、「梁を縦に積み替えれば門を通せる」と思いついたという伝説があります。

カール・ヘアツォーク(Carl Hertzog)の1842年の詩「ウルムの雀」により、この古いウルムの言い伝えはドイツ各地に広まりました。

ドイツ ウルム の雀

1858年に大聖堂の屋根にウルムの雀の石像が設置されました。現在、この石像は大聖堂の入り口の近くのガラスケースに飾られています。


中世のドイツの街並みが美しいフィッシャーフィアテル

ドイツ ウルム

フィッシャー・ウントゥ・ゲルバーフィアテル(Fischer- und Gerberviertel=漁師と皮なめし職人の地区)は、ウルム大聖堂からドナウ川へ向かって南西方向に位置し、ブラウ川沿いに広がっています。この地区には、15~17世紀の木組みの家が残り、ウルムの中世の面影を垣間見ることができます。

ドイツ ウルム

漁師たちは、ブラウ川沿いの家から「ウルムの箱(Ulmer Schachtel)」と呼ばれる細長くて平らな木船をこぎ、ドナウ川へ漁に出ました。そのため、ここでは造船業も盛んでした。

また、皮なめし職人も皮をなめすために大量の水が必要なので、ブラウ川沿いに集まりました。

ブラウ川の源は、ウルムから電車で10分ほどの町ブラウボイレンにある美しい青い泉・ブラウトプフの湧き水です。ブラウボイレンは「ドイツ木組みの家街道」に加盟しており、またブラウトプフはユネスコ世界ジオパークに認定されています。ぜひ、足を運んでみてください。


ウルムのフィッシャーフィアテルにあるホテル「傾いた家」

ドイツ ウルム の傾いた家

ブラウ川沿いの地盤が悪く、傾いてしまったシーフェス・ハウス(Schiefes Haus=傾いた家)は、ウルムのフィッシャーフィアテルでも特に有名な観光スポットです。

この木組みの家は1406年に建てられ、地下には生きた魚を入れておく設備があったことから、漁師が住んでいたことが確認されています。19世紀以降の記録によると、その後は豚飼いや工場労働者が住み、最後に住んでいたのは仕立て屋の未亡人でした。

ドイツ ウルム
<シーフェス・ハウス基本情報>
所在地:Schwoerhausgasse 6, 89073 Ulm, Germany
アクセス:ウルム中央駅からドナウ川方面に向かって900m、徒歩12分ほど

フィッシャーフィアテルで最も古いガストハウス

ドイツ ウルム

傾いた家から徒歩1分ほど歩くと、壁に「ツア・フォレレ(Zur Forelle)」と書かれた古い家あります。この家は、1626年創業のフィッシャーフィアテルで最も古いガストハウス(Gasthaus)でした。ドイツ語のスペルは「Zur Forelle」で、“Zur“はズアではなくツアと発音します。

また、トリップアドバイザーのトラベラーズチョイス2020年に選ばれ、地元の魚フォレレ(Forelle=マス)やシュヴァーベン地方の郷土料理をメインに提供していました。

建物が古くなったZur Forelleは、2023年6月19日からしばらくの間修復が行われていました。そして、30年前にここで修行していたOsman Kavak氏が新たな店主となり、2024年2月から再オープンしています。

ドイツ、シュヴァーベン地方ならではのウルムの郷土料理

新たにオープンしたツア・フォレレはメニューのバリエーションが増えました。一方で、シュヴァーベン地方の伝統料理もしっかりと引き継がれています。ツア・フォレレならではのマス料理も、Müllerin Art、Blau、Ulmer Artの3種類から選べます。

Müllerin Art (直訳=粉屋風):粉屋風という名前の通り、マスを小麦粉で軽くまぶし、バターで焼いたいわゆるマスのムニエルです。仕上げにレモンとパセリが添えられ、香ばしさとバターの風味が楽しめます。

Blau (青焼き):新鮮なマスを酢とレモン、そして 玉ねぎ、ネギ、セロリ、フェンネルなどを使った出汁で軽く茹でます。酢の作用で魚の皮が青みがかるのでブラウ(青=Blau)と呼ばれます。上品でさっぱりとした風味が特徴です。

Ulmer Art (ウルム風):サクッと揚げたマスに熱いアーモンドバターをかけていただく、ウルム特有のスタイルです。香ばしいスライスアーモンドとバターの風味が白身魚のマスによく合います。

同じくシュヴァーベン地方の郷土料理のひとつ、シュペッツレ(Spätzle:小麦粉と卵で作るパスタ)もぜひ試してみてください。

<ツア・フォレレ|Zur Forelle 基本情報>
所在地:Fischergasse 25、89073 Ulm
アクセス:ウルム中央駅からドナウ川方面に向かって900m、徒歩12分ほど


ドイツのドナウ川沿いの街ウルムのまとめ

数あるウルムの見どころの中から、古くからの言い伝えとゆかりのあるスポットをご紹介しました。ウルムはシュトュットガルトとミュンヘンのほぼ真ん中に位置します。そのため、ユネスコ世界ジオパークのシュヴェービッシェ・アルプの名所めぐりの拠点としても便利です。

最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
(この記事は、2020年9月にトラベルサイト向けに執筆し、2023年に自身のブログへ移して追記および更新したものです。)