更新日2024-07-06   公開日2020-09-21

南ドイツのドナウ川沿いにあるウルムは、世界一高い塔のあるゴシック建築のウルム大聖堂やアインシュタインの生誕地として知られています。ドナウ川に面したレンガ造りの城壁、美しい中世の街並みが残るフィッシャーフィアテル、宿泊できる15世紀の傾いた中世の木組みの家など見どころもたくさん。ウルムの斜塔と呼ばれる「肉屋の塔」や「ウルムの雀」にまつわる話やドイツ語の「ウルム早口言葉」と共にご紹介します。


ウルムっ子自慢の大聖堂!ウルマー・ミュンスター

ドイツ ウルムのミュンスター

「ウルムで、ウルムの周りで、そしてウルム周辺一帯で(In Ulm, um Ulm und um Ulm herum)」というドイツ語の早口言葉はご存知でしょうか? ウルムに関して、ドイツで早口言葉と同様に知られているのが世界一高い塔を持つ大聖堂です。

ウルム大聖堂はドイツ語で「ウルマー・ミュンスター(Ulmer Muenster)」。ちなみに同じく日本語で「大聖堂」と訳されるケルンの大聖堂は司教がいるため、ドイツ語では「ミュンスター」ではなく「ドーム(Dom)」になります。

ドイツ ウルムのミュンスター

ウルムっ子自慢のミュンスターの塔は高さが161.53メートル。世界で一番高い塔のある大聖堂として知られています。 ドイツのユネスコ世界遺産のケルンの大聖堂は塔が2つありますが、南塔が157.31メートルで北塔は157.38メートルなので、ウルムのミュンスターのほうが4メートルほど高くなります。なので「ケルンの大聖堂よりウルムのミュンスターの方が塔が高い」とウルムっ子は自慢します。

空気の澄んだ晴れた日に大聖堂の塔に登るとユネスコ世界ジオパークに認定されたシュヴェービッシュエ・アルプ(Schwaebische Alb)を見渡すことができます。麓のドナウ川やオレンジ色の屋根の家が建ち並ぶ美しい街並みとのコントラストは壮麗で一見の価値あり。螺旋階段と足がすくむような高さに耐えられる方はぜひトライしてみてください。

ドイツ ウルムのミュンスター
Konzert im Ulmer Münster 提供元:Ulm/Neu-Ulm Touristik GmbH

ウルム大聖堂は1377年に建設がはじまり、1890年に世界一高い塔を持つ大聖堂として完成しました。大聖堂内は20,000人を収容することができ、建設当時のウルム市民の数を大きく上回る規模でした。

1488年のフェリックス・ファブリによる巡礼の記録には、「司教が在任する多くの大聖堂(ドーム)よりも大きく、あらゆる角度から光が差し込む設計はどこの教会よりも美しく、祭壇の数は51もある。毎日多くの子供たちが洗礼を受け、ウルム市民達の寄付により建てられた大聖堂…」と当時の様子が記されています。

<ウルム大聖堂の基本情報>
名称:Ulmer Muenster
住所:Muensterplatz 1,89073 Ulm


ドイツのドナウ川沿いに続くウルムの城壁

ドイツ ウルムの城壁

バーデン=ヴュルテンベルク州のウルムとバイエルン州のノイ・ウルム(新ウルム)の州境にはドナウ川が流れています。大聖堂を望むウルムの街並みはドナウ川の対岸、ノイ・ウルムからの眺め。ドナウ川沿いには古いレンガの城壁が続いています。

写真の右側にある茶色い屋根の塔は1340年に建てられた高さ36mのウルムの防衛塔で、「肉屋の塔(Metzgerturn)」の名で親しまれています。北西に3.3度、2.05メートル傾いていることから「ウルムの斜塔」とも呼ばれています。

その昔、ソーセージにおがくずを混ぜてかさ増しした肉屋をここに閉じ込めていました。 ある日役人が来た時に、罰を恐れた太った肉屋たちが一斉に部屋の角に移動したことから塔が傾いてしまったという言い伝えがあります。

ドイツ ウルムの城壁

ドナウ川沿いに続くウルムの城壁の上は眺めのいい歩道になっています。ドナウ川の流れや城壁沿いのお店などを眺めて散策するのもおススメです。


南ドイツのウルムと言えば雀(すずめ)

ドイツ ウルムの雀

ウルムの街中を歩いていると本屋や、ホテル、音楽学校など様々な場所で雀の彫刻を見かけます。

その昔、ウルムの市壁内に建物を建てるために大量の木材が必要となりましたが、梁を横積みにした荷車は城門が狭くて通れません。市長も判事も前例がなくお手上げ。城門を壊さなくてはいけないのかと皆が悩んでいた時、藁をくわえて塔の上に運び巣作りをしていた雀からヒントを得た人が、「梁を縦に積み替えて門を通せばいいのだ」と思いついたという言い伝えがあります。

カール・ヘアツォーク(Carl Hertzog)の1842年作の詩「ウルムの雀」により、この古いウルムの言い伝えがドイツ各地に広まりました。

ドイツ ウルムの雀

1858年に大聖堂の屋根に設置されたウルムの雀の石像は、現在大聖堂の入り口の近くのガラスケースに飾られています。


中世の街並みが美しいフィッシャーフィアテル

ドイツ ウルム

フィッシャー・ウントゥ・ゲルバーフィアテル(Fischer- und Gerberviertel=漁師と皮なめし職人の地区)はウルム大聖堂からドナウ川へ向かって南西方向にあるブラウ川沿いに広がっています。15~17世紀の木組みの家が残る、ウルムの中世の面影を垣間見ることができる地区です。

ドイツ ウルム

漁師はブラウ川沿いの家から「ウルムの箱(Ulmer Schachtel)」と呼ばれる、細長くて平らな木船を漕いでドナウ川へ漁に出ました。そのためここでは造船業も盛んになります。皮をなめすために大量の水を使うことから皮なめし職人もブラウ川沿いに集まりました。

ブラウ川のルーツはウルムから電車で10分ほどの町、ブラウボイレンにある美しい青い泉・ブラウトプフの湧き水です。「ドイツ木組みの家街道」に加盟しているブラウボイレンと、ユネスコ世界ジオパークに認定されているブラウトプフにも是非足を運んでみてください。


ウルムのフィッシャーフィアテルにあるホテル「傾いた家」

ドイツ ウルムの傾いた家

ブラウ川沿いの地盤が悪く、傾いてしまったシーフェス・ハウス(Schiefes Haus=傾いた家)はウルムのフィッシャーフィアテルでも特に有名な観光スポットです。

1406年に建てられたこの木組みの家は、地下に生きた魚を入れておくための設備があったことから漁師が住んでいたことが確認されています。19世紀以降の記録によると、その後は豚飼い、工場労働者と住む人が変わり、最後に住んでいたのは仕立て屋の未亡人でした。

ドイツ ウルム
<シーフェス・ハウス基本情報>
所在地:Schwoerhausgasse 6, 89073 Ulm, Germany
アクセス:ウルム中央駅からドナウ川方面に向かって900m、徒歩12分ほど

ドイツのシュヴァーベン地方ならではのウルムの郷土料理店

ドイツ ウルム

傾いた家から徒歩1分ほどのツァ・フォレレ(Zur Forelle)はフィッシャーフィアテルで最も古い、1626年に創業したガストハウス(Gasthaus)で、トリップアドバイザーのトラベラーズチョイス2020年に選ばれています。

その名の通り、地元の魚フォレレ(Forelle=マス)や、シュヴァーベン地方の郷土料理がメイン。この地方で有名な手打ちの卵パスタ「シュペッツレ(Spaetzle)」も試してみて下さい。

※ Zur Forelleは2023年6月19日から建物の修復中です。再開日は公式サイトでご確認ください。

<ツァ・フォレレ基本情報>
所在地:Fischergasse 25、89073 Ulm
アクセス:ウルム中央駅からドナウ川方面に向かって900m、徒歩12分ほど

ドイツのドナウ川沿いの街ウルムのまとめ

数あるウルムの見どころの中から、古くからの言い伝えとゆかりのあるスポットをご紹介しました。シュトュットガルトとミュンヘンのほぼ真ん中に位置するウルムは、ユネスコ世界ジオパークのシュヴェービッシェ・アルプの名所めぐりの拠点にしても便利です。

最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
(この記事は2020年9月にトラベルサイトに掲載された記事を自身のブログに移して2023年に更新したものです。)