神奈川県横須賀市にある猿島。「国史跡」に指定され「日本遺産」にも登録されています。無人島ならではの豊かな自然と歴史的な要塞跡から放たれる神秘的な雰囲気が漂う猿島は、都心からの日帰り旅行に最適です。
海と自然に囲まれた美しい猿島
猿島はガイドの説明を聞きながら島内を巡るほか、個人で自由に散策することもできます。小さな島全体に広がる豊かな自然と神秘的な要塞跡が残る無人島の中の非日常的な世界に引き込まれます。
「猿島」という名前から猿が生息している島なのかと思うかもしれませんが、猿島に猿はいません。島の名前は日蓮上人が深い霧に包まれた際に白猿に導かれたという伝説に由来します。島の北側にある日蓮洞窟は現在立ち入り禁止で残念ながら見ることができません。
東京湾内の無人島、猿島へ日帰り旅行
猿島は神奈川県横須賀市に位置する東京湾内の無人島です。三笠桟橋から船で約10分。横須賀中央駅からもアクセスしやすい場所に位置しています。船の待ち時間には、隣接する三笠公園の歴史的戦艦「三笠」を見学したり、三笠ターミナルでのショッピングや軽食を楽しむこともできます。
砂浜から写した猿島桟橋。小さな船で10分ほどの短い船旅ですが、船から眺める海や横須賀市街の風景と徐々に近づいてくる猿島がわくわく感を高めます。
都心からのアクセスの良さと自然の美しさを兼ね備え、日帰りの小旅行に最適な猿島。船で島に着くと猿島桟橋の右側に「砂鉄の浜」と呼ばれる砂浜が広がります。
ここでは海水浴やバーベキューも楽しめます。食材を持って島に行けば、バーベキューに必要な機材はすべてレンタルショップで借りることができます。波打つ海と対岸の横須賀市街を眺めながらゆったりとくつろぐことも。
島はタブの木の原生林で覆われていて、要塞はこの中に外からは見えないように築かれています。
猿島は幕末から第二次世界大戦終戦まで軍事要塞として使用されていました。黒船の来航時に江戸幕府によって築かれた砲台や、明治時代に配備されたフランス製カノン砲など、東京湾の防衛に重要な役割を果たしてきました。
第二次世界大戦時には再び防衛の要として重視され、鉄筋コンクリート製の砲座が建造されました。
終戦後に高射砲は解体されましたが、砲台や兵舎、弾薬庫は今も島に残り、当時の軍事的重要性を今に伝えています。
フランス積みレンガの要塞とトンネル
猿島のレンガ造りの要塞やトンネルは「フランス積み」という特殊な積み方で建造された、歴史的にも価値のある貴重な建築物です。
イギリス積みが主流になる前に使用されていたフランス積み方式。このフランス積みレンガの建築物は日本に数カ所しか現存していません。
レンガの長手だけの段と小口だけの段を交互に積み上げるイギリス積みとは異なり、写真のように長手と小口を順番に並べていくのがフランス積みです。猿島には造られた時期によりイギリス積みのものも存在するのでレンガの積み方をよくみて探してみる楽しみも。
猿島の島内は歩行路が整備されていて歩きやすく、それにより自然と史跡が大切に保護されているなと感じました。レンガ積みの兵舎や弾薬庫などの旧要塞施設がならぶ切通しを進むとトンネルに続きます。
トンネルの内部にも柵の扉が閉められた保管庫や兵舎などの空間がいくつかあり、スマホのライトで柵の中を照らして見るとまた違った印象に。
猿島に3か所あるトンネルの中で一番長いレンガ造りのトンネルの全長は約90メートル。薄暗いので寄り添って歩くカップルが多いことから「愛のトンネル」と呼ばれることも。
「愛のトンネル」を抜けるとSNSで「天空の城ラピュタ」の廃墟のようだと話題になった空間が広がります。その先には左右にふたつの小さなトンネルが続きます。
レンガ造りの兵舎や弾丸庫の周りにはシダが生え、トンネルにはツタが絡んで自然と調和していく廃墟。もともと島の外から要塞が見えないように樹木で囲まれていたためか、島の豊かな自然の風景に溶け込んでいます。
猿島の頂上広場と展望台からの美しい眺め
島の展望台からは、東京湾の美しい水面や周辺の風景が一望できます。対岸には米海軍横須賀基地も見えます。
砲台跡から眺める東京湾。樹木に囲まれた自然豊かな環境の中、島の歴史と自然の絶景を同時に楽しむことができます。
今回はツアーに参加して猿島の見どころをガイドさんの説明を聞きながらぐるりと見て回ってから、ツアー解散後に島内をさらに一周しました。一時間ほどあれば島内を見て回れるので、ツアーでは通らなかった場所も散策。ツアーでは写真に人が写り込んでしまうため、写真スポットはツアー後にもう一度ゆっくりと見てまわり写真を撮りました。
都心から日帰りで行ける自然豊かで歴史的遺構もある無人島。
季節によりお得なチケットもある猿島の入園料や船の運航時刻表などの猿島の最新情報は公式サイトからご確認ください。
所在地:〒238-0019 横須賀市猿島1
アクセス:京急横須賀中央駅から三笠桟橋まで徒歩15分、三笠桟橋から船で約10分