かつての天守跡に建てられた展望台から中津川市内を360度見渡せる国指定史跡の苗木城跡。本丸を岩山である高森山の山頂に構え、その巨大な自然岩を利用して、年代ごとに異なる技法で積み上げられた石垣も見事です。
足軽長屋から眺める苗木城跡
苗木遠山資料館の方に苗木城と周辺の見所を親切に教えていただいてからお城に向かいました。
あいにくの雨日和でしたが、幸運にも苗木城跡の見学中は雨も止み、晴天では見られない木曽川や森から立ち上る靄としっとりとした苗木城の風景を楽しめました。
資料館の裏手にある駐車場(A1)を通り過ぎると足軽長屋跡があります。ここから天守跡を一望できます。
大きな天然岩と江戸時代初期以降に使われた切込接ぎと呼ばれる技法で積まれた石垣が残る風吹門跡。城下から三の丸への出入り口で、併置された門番所があり常に人の出入りを監視していたとか。唯一現存する「風吹門」だと言い伝えられている門扉が苗木遠山資料館に展示されています。
苗木城跡で最も大きな大矢倉
門を抜けると17世紀中頃に造られた大矢倉があります。1階は倉庫、2階と3階は北側の防御を担う矢狭間がある苗木城の中で最も大きな3階建の櫓だったそうです。大きな岩と綺麗に積まれた石垣が調和していて素敵です。
登ってみると上の階は部屋のように区切られていて、城の北側の状況をここから監視していた当時の様子が思い浮かびます。
苗木城跡の天守と本丸跡へ
大矢倉の反対側にある天守・本丸跡へ大門跡から階段を登っていきます。大門は幅が5mある門だったそうです。大門跡を通り過ぎると、文書や刀剣などが納められた御朱印蔵跡があり階段に続きます。
城跡内にたくさん見られる天然岩の中には一部が削られ、階段のようになっているものも。
天守展望台へ続く道にはいくつかの門跡があります。大門の次の綿蔵門は当時2階に年貢として納められた真綿が保管され、午後4時になると扉は閉まり本丸に行くことができなかったそうです。綿蔵門をさらに進むと坂下門で、礎石と綺麗に並べられた石段があります。
坂下門跡から眺めた風景。木曽川の赤い鉄橋と、領主遠山家の住居があった二の丸も一望できる絶景スポットのひとつ。二の丸の綺麗に並んだ礎石や束石がよく見えます。自然に囲まれた当時の住居の中から眺める景色はさぞ美しかったことでしょう。
本丸口門と菱櫓門の間の石垣の横に小さな屋根で守られた井戸が。水が枯れることなく千人の用を達したことから千石井戸と名付けられたそうです。苗木城の中で一番高い場所にあり、今でも水が湧き出ているこの井戸は山城にとってとても貴重な水源ですね。
井戸から武器蔵を通り笠置矢倉へ。木曽川の先に笠置山が見えることから笠置矢倉と呼ばれ、坂下門跡にならぶ苗木城跡内の絶景スポットのひとつですが、この日は笠置山の頂上が雲に覆われていて残念。
笠置矢倉からの絶景と共に目に飛び込んでくるのがこの大きな岩。周囲が約45mあるという花崗岩質の自然石。敵に攻められ水の手を切られた時、この岩の上に馬を乗せて米で洗い、遠くの敵に水が豊富にあるかのように見せたという言い伝えがあるそうですが、実際には馬を乗せるのは無理そうです。千石井戸の水もこのような時に十分だったのだろうかと心配になりました。
馬洗岩の後ろにまわり玄関口門を登っていくと本丸玄関跡、そこから一段高い天守台の天守展望台へと続きます。
展望台のある苗木城跡の天守へ
天守の柱があった穴を再利用して建てられたという展望台。なんとWiFiも使えます。天守の一部は巨大な天然の岩の上に建てられていたのですね。
天守展望台から眺めた笠置矢倉方面とその反対側の中津川市街と恵那山を望む風景。雨上がりなので木曽川や森から靄が上がり、幻想的な雰囲気に包まれていました。
ちなみに中津川市街地方面の写真に写る3つの橋の真ん中の橋は今はなき北恵那鉄道の木曽川橋梁です。そして手前の未完成の橋はリニア中央新幹線のために建設中の橋。東京から中津川まで約60分、名古屋から中津川は15分で行けるようになるそうです。ここ苗木城の天守展望台から写真を撮る人が増えそうですね。
苗木城跡/Naegi Castle Ruins
所在地/Adress:岐阜県中津川市苗木 / Naegi, Nakatsugawa City, Gifu, Japan