更新日2026-01-13   公開日2025-07-17

バルセロナのカサ・ビセンスは、ガウディが31歳で初めて受けた大規模な委託作品です。依頼人はカタルーニャ出身の裕福な証券仲買人で、ブルジョワ階級の一人であったマヌエル・ビセンス氏で、ビセンス家の夏の別荘として設計されました。この家が建てられたのは、現在のバルセロナ市グラシア地区。当時はバルセロナ市の郊外だったため、静かな別荘地として理想的なロケーションでした。

カサ・ビセンスは100年以上もの間、個人所有の建築物でしたが、2005年にユネスコ世界遺産に登録され、2017年から一般公開となりました。鮮やかな朱色のレンガに、鉄、陶器、木材を融合させた外観はとてもカラフルで印象的。バルセロナの街中でも一際目を引く建物です。

ガウディの住宅建築をめぐるルートとしてもぴったり。ほぼ直線上のルートで、カサ・ミラから約19分(1.5km)、カサ・バトリョからは約24分(1.9km)の距離です。


カサ・ビセンスの色彩豊かなファサード

カサ・ビセンスの華やかな外観は、東洋やイスラム、ムデハル建築などの要素を取り入れ、エキゾチックな雰囲気を醸し出しています。この建築は約20年後に花開くモダニズムの先駆けとも言われています。

カサ・ビセンス、ガウディ

朱色のレンガやカラフルな陶器のタイルで彩られたファサードはとても華やか。なかでも、ムーア風のオレンジ色の花が描かれたタイルは、このユネスコ世界遺産の代名詞的な装飾となっています。

カサ・ビセンス、ガウディ

ちなみに、このオレンジ色の花柄のクッションカバーをカサ・ビセンス内のショップで見つけ、旅の思い出として購入しました。我が家のリビングはカサ・ビセンスとカサ・バトリョのクッションカバーで飾られています。日本の45cm x 40cmのクッションにぴったりでした。

メインフロアは自然と調和する生活空間|ダイニングルームと喫煙室へ

カサ・ビセンス、ガウディ

玄関ホールから進むと、広いダイニングルームへ。部屋全体を埋め尽くす絵画や壁画、レリーフに圧倒されます。壁には、鳥や昆虫、草花といった自然のモチーフが繊細に描かれています。

カサ・ビセンス、ガウディ

天井には、精緻な植物の立体レリーフが施され、空間にやわらかな動きを加えています。まるで、花壇や植物園のパーゴラを見上げているような気分に。壁に溶け込むように設置された木製家具は、扉以外の面すべてに油絵がはめ込まれ、家具そのものが絵画のフレームのようです。

カサ・ビセンス、ガウディ

ダイニングルームの暖炉の左右にある大きなガラス扉は、ベランダ(ポーチ)へと続きます。夏の別荘として建てられたこの家のベランダは、ベンチと可動式の日除け鎧戸で囲まれています。そして、天井には美しい彫刻も。日差しの強い日でも、屋外の風を感じながら読書などしたくなる居心地のいい空間です。実際、多くの観光客が、ベンチでくつろいでいました。

カサ・ビセンス、ガウディ

外から見た可動式の日除け鎧戸がこちら。このように、直射日光を遮りながらも、光や風を取り入れる機能的でモダンなデザインです。

カサ・ビセンス、ガウディ

ダイニングルームの隣には喫煙室があります。ブルーの鱗のようなタイルが波打つ天井を持つこの部屋は、喫煙室というよりチャペルのようです。さらに、壁一面に張られた、質感の異なるタイルの組み合わせも印象的。そして、扉と窓の上はステンドグラスで彩られ、西日が差し込むと、華やかなタイル張りの部屋はさらに色彩豊かに。おそらく、この部屋で燻らす葉巻の煙も、その光に染まり漂っていたことでしょう。

六角形の空間でつながるビセンス家のプライベート空間

カサ・ビセンス、ガウディ

メインフロアから階段を上り一階へ行くと、寝室、浴室、そして応接室があります。両親のベッドルームと浴室、子供部屋の間に2箇所、3つの部屋を繋ぐ六角形のスペースが設けられ、ここからプライベート空間を移動できるようになっています。この写真の寝室も、六角形のスペースに合わせて扉が斜めになっています。

また、寝室は部屋の中心を境に、左右にブルーとピンクに色分けされています。床は中央に並べられたタイルで分けられ、天井のレリーフもそれぞれ異なる植物で飾られています。こうした工夫によって、ご夫婦それぞれのスペースが保たれています。

この寝室はメインフロアのダイニングルームの真上にあるため、それに伴い、大きなバルコニーも同じ位置にあります。

こちらは赤を基調とした女性の部屋。ちなみに、メインフロアにある男性用の青い喫煙室の真上に位置しています。扉を開けると、小さなバルコニーがあります。このバルコニーもベンチ仕様になっていて、小さいながらも、3人で座っておしゃべりできるくらいのスペースがあります。青空と鳥が描かれた天井も素敵です。

ガウディの思想に触れる、屋根裏に広がる展示と手稿

カサ・ビセンス、ガウディ

白い壁に囲まれた木製の階段を登ると屋根裏部屋へ。さらに上を見ると、天井には真っ白に塗られた当時の梁も残されています。屋根裏部屋は使用人のために設計された、風通しの良い開放的な空間でした。現在、このフロアは常設展示室になっています。

ここには、ガウディの手書きの設計図面や資料が展示してあります。また、文章を書くことは少なかったといわれるガウディの、建築に対する思想などが綴られた貴重な資料を見ることができます。

カサ・ビセンスの精巧な模型も。さまざまな角度から見てみました。なお、この写真から屋根裏部屋の広さも伝わると思います。

ガウディはビセンス家のために家具もデザインしました。その一部もここに展示されています。

ガウディは初めて設計したこの邸宅に、歩行可能な屋上を作りました。このアイデアはカサ・バトリョカサ・ミラの屋上へと発展していきます。

煙突や尖塔もタイルで覆われています。花をあしらった美しい鉄製の柵で守られています。

カサ・ビセンスへのアクセスとガウディ建築マップ

バルセロナでガウディ建築巡りをするなら、見学可能な住宅建築のカサ・ビセンス、カサ・ミラ、カサ・バトリョがおすすめ。すべての邸宅が2km以内にあり、グラシア通りを中心にほぼ直線上に並んでいます。ちなみに、カサ・ビセンスはカサ・ミラから北西へ徒歩約19分(1.5km)、カサ・バトリョからは約24分(1.9km)です。

初めてバルセロナを訪れた当時は、メトロで移動していましたが、今ではバルセロナ市内をひたすら歩き回っています。バルセロナ市の面積は東京23区の約1/6、横浜市の約1/4です。しかもその中に世界遺産や文化、そしてビーチまでもがギュッと凝縮された魅力的な街。1〜2日あれば主要スポットを観光できるコンパクトさもバルセロナの魅力です。

カサ・ミラカサ・バトリョについても別の記事で紹介しています。それぞれの邸宅の写真と見どころなどもあわせてご覧ください。

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