更新日2025-07-20   公開日2020-09-21

南ドイツのドナウ川沿いの古都ウルム。この街は、世界一高い尖塔をもつゴシック建築のウルム大聖堂や、アインシュタインの生誕地として広く知られています。また、ウルムには美しい中世の街並みが今なお残っています。たとえばドナウ川に沿って築かれたレンガ造りの城壁や、木組みの家々が立ち並ぶフィッシャーフィアテル。そのほかにも、実際に泊まれる15世紀の傾いた木組みの家や、ウルムの斜塔と呼ばれる「肉屋の塔」も見逃せません。そんなウルムの観光スポットを「ウルムの雀」の伝説や、ドイツ語の「ウルム早口言葉」とあわせてご紹介します。


ウルムっ子自慢の大聖堂!ウルマー・ミュンスター

ドイツ ウルム のミュンスター

「ウルムで、ウルムの周りで、そしてウルム周辺一帯で」というドイツ語の早口言葉をご存じですか? ドイツ語では“ In Ulm, um Ulm und um Ulm herum“ 。Uとmで唇をすぼめたり閉じたりするので大変です。このフレーズと同じくらい有名なのが、世界一高い塔を持つウルム大聖堂です。

日本語で「大聖堂」と訳されますが、ドイツ語では「ウルマー・ミュンスター(Ulmer Münster)」と呼ばれ、司教がいるケルン大聖堂の「ドーム(Dom)」とは名称が異なります。

ドイツ ウルム のミュンスター

ウルムっ子自慢のミュンスターの塔の高さは161.53メートル。世界一高い塔を持つ大聖堂として知られています。

一方、ドイツのユネスコ世界遺産・ケルン大聖堂には二本の塔が。南塔が157.31メートル、北塔が157.38メートルという高さです。しかし、ウルムの塔は一本でもケルンより約4メートル高く、地元の人々は「ケルン大聖堂より高い!」と、その高さを誇ります。

さらに晴れた日には、塔の上からユネスコ世界ジオパークの「シュヴェービッシェ・アルプ(Schwaebische Alb)」を一望できます。足元にはオレンジ色の屋根が連なるウルムの街並みも。また、ドナウ川が流れる美しい風景にも目を奪われます。足がすくむような高さに耐えられる方は、ぜひ塔の上まで続く長い螺旋階段を登ってみてください。

ウルム大聖堂の歴史

ドイツ ウルム のミュンスター
Konzert im Ulmer Münster 提供元:Ulm/Neu-Ulm Touristik GmbH

ウルム大聖堂の建設は1377年に始まり、世界一高い塔をもつ大聖堂として1890年に完成しました。内部には約20,000人を収容可能。これは当時のウルムの人口をはるかに上回る規模でした。

1488年に、巡礼者フェリックス・ファブリはその印象を巡礼記録の中にこう記しています。「司教が在任する多くの大聖堂(ドーム)よりも大きく、あらゆる角度から光が差し込む構造はどの教会よりも美しい。しかも、祭壇の数は51にも及び、毎日多くの子供が洗礼を受ける。なによりも、この全てはウルム市民の寄付により築かれた大聖堂…」。

<ウルム大聖堂の基本情報>
名称:Ulmer Muenster
住所:Muensterplatz 1,89073 Ulm


アインシュタインの泉、生誕地ウルムに佇む前衛アート

ウルム大聖堂から徒歩10分ほどの場所にある裁判所。その建物の間に、アインシュタインの泉(Einsteinbrunnen)はひっそりと佇んでいます。

1984年に彫刻家ユルゲン・ゲルツによって制作されたこのブロンズ像は、アインシュタインのユーモアと知性を、前衛的な造形で表現しています。

舌を出したアインシュタインが、ロケットの上に乗ったカタツムリの殻の中から顔をのぞかせる姿は、奇抜でありながらも愛嬌があります。

横から見ると、殻が割れ、脳みそがあふれ出しているようにも見え、彼の創造性を象徴しているかのようです。

ウルムはアインシュタインの生誕地ですが、一家はアインシュタインが生まれた翌年にミュンヘンへ引っ越しました。さらに、第二次世界大戦の空撃でアインシュタインの生家は完全に破壊されてしまいました。現在はその跡地に記念碑が建てられています。

<アインシュタインの泉>
名称:Einsteinbrunnen
住所:Zeughausgasse 15, 89073 Ulm


ウルムの城壁と肉屋の塔の伝説

ドイツ ウルムの城壁

バーデン=ヴュルテンベルク州のウルムと、対岸のバイエルン州のノイ・ウルム。その州境を流れるのがドナウ川です。ウルムの街並みやウルム大聖堂を一望したいなら、ノイ・ウルム側からの眺めがおすすめ。ドナウ川沿いに続く赤茶のレンガの城壁が、この街の歴史の深さを物語っています。

写真右側に見える茶色い屋根の塔は、「肉屋の塔(Metzgerturn)」の名で親しまれる中世の防衛塔。1340年に建てられ、高さは36メートルあります。この防衛塔は北西に3.3度、2.05メートル傾いていることから「ウルムの斜塔」とも呼ばれています。

その名の由来として、ユーモラスな言い伝えが残されています。かつて、ソーセージにおがくずを混ぜ、かさ増しして売っていた肉屋たちがこの塔に閉じ込められました。 ある日、役人の訪問に慌てた太った肉屋たちが、部屋の隅へと一斉に逃げ込みました。なんとその時から、塔が傾いてしまったとか。

ドイツ ウルム の城壁

ドナウ川沿いに続くウルムの城壁の上は、眺めの良い散策路として整備されています。美しいドナウ川の流れや、城壁沿いのお店を眺めながら歩くのもおすすめです。


ウルムのシンボル、雀の伝説

ドイツ ウルム の雀

ウルムの街中を歩いていると、至る所で雀の彫刻に出会います。本屋の軒先、ホテルのロビー、さらには音楽学校の壁にも。その愛らしい姿は、街のシンボルとして親しまれています。

この雀には、古くから伝わるウルムの伝説があります。かつてウルムの市壁の内側に新しい建物を建てるため、大量の木材が必要となりました。しかし、梁を横積みにした荷車は狭い城門を通れません。市長も判事も前例がないため頭を悩ませます。さらには「城門を壊すしかない」とまで考えます。そんな時、誰かが塔の上で巣作りしている一羽の雀に目をとめます。雀はくちばしで藁を縦にくわえ、狭い隙間をするりと器用に通り抜けます。その雀の姿から、ようやく「梁を縦に積み替えれば門を通せる」とひらめいたとか。

この逸話は、1842年にカール・ヘアツォークが詩「ウルムの雀」に綴ったことで、ドイツ中に知られるようになりました。そして今もなお、ウルムの街のあらゆる場所で雀は知恵とひらめきの象徴として飾られています。

ドイツ ウルム の雀

1858年に、ウルム大聖堂の屋根に一羽の雀の石像が据えられました。この「ウルムの雀」の石像は、街の象徴として親しまれてきました。かつての象徴は、今では大聖堂の入口の近くのガラスケースの中に大切に収められています。この写真が実際の「ウルムの雀」の石像です。そして、この雀のくちばしに注目。ウルムの雀伝説のとおり、藁を縦にくわえています。


漁師と皮なめし職人の地区と水源のブラウトプフ

ドイツ ウルム

ウルムの旧市街の南西、ドナウ川へと続くブラウ川沿いに広がるのが「フィッシャー・ウント・ゲルバーフィアテル」。その名のとおり、かつてこの地域には、漁師と皮なめし職人たちが暮らしていました。15~17世紀に建てられた木組みの家が立ち並び、今でもウルムの中世の面影を垣間見ることができます。

🇩🇪Fischer- und Gerberviertel:漁師と皮なめし職人の地区

ドイツ ウルム

漁師たちは、ブラウ川沿いの家から「ウルムの箱(Ulmer Schachtel)」と呼ばれる細長く平らな木舟をこぎ、ドナウ川へと漁に出ました。そのため、この地区では造船業も栄えました。

一方、皮なめし職人にとっても水辺は重要な場所。なめし作業には大量の水が必要であったため、ブラウ川沿いに多くの工房が集まりました。

ちなみに、このブラウ川の水源は、ウルムから電車で10分ほどの町ブラウボイレンにあります。ここに沸く泉「ブラウトプフ(Blautopf)」は、深い青色の湧き水です。この美しい青い泉は、その底から深く続くブラウトプフ洞窟とともに、ユネスコ世界ジオパークにも登録されています。また、ブラウボイレンは「ドイツ木組みの家街道」にも加盟しており、歴史と自然の魅力あふれる場所です。ぜひ、足を運んでみてください。


ウルムのフィッシャーフィアテルにあるホテル「傾いた家」

ドイツ ウルム の傾いた家

ブラウ川沿いに佇む「シーフェス・ハウス(Schiefes Haus=傾いた家)」は、ウルムのフィッシャーフィアテルの中でもひときわ注目を集める観光スポットです。地盤の緩さにより大きく傾いてしまったこの古い木組みの家は、その不安定な姿で訪れる人々の注目を集めています。

ドイツ ウルム

傾いた家を反対側から見た写真です。この家は1406年に建てられました。地下には生け簀のような設備があり、当時この家に住んでいたのは漁師であったことが確認されています。その後、19世紀以降の記録によると、豚飼いや工場労働者などが暮らしていました。そして最後にこの家で暮らしていたのは、仕立て屋の未亡人だったそうです。

<シーフェス・ハウス基本情報>
所在地:Schwoerhausgasse 6, 89073 Ulm, Germany
アクセス:ウルム中央駅からドナウ川方面に向かって900m、徒歩12分ほど

ウルムのフィッシャーフィアテルで最も古いガストハウス

ドイツ ウルム

傾いた家から徒歩1分ほど歩くと、壁に「Zur Forelle」と書かれた趣のある家が現れます。この家は、1626年創業のガストハウス(Gasthaus)。フィッシャーフィアテルで最も古い宿でした。ちなみに「Zur Forelle」のドイツ語発音は「ツア・フォレレ」。“Zur“は「ズア」ではなく「ツア」と発音します。

この店では、シュヴァーベン地方の郷土料理や地元の魚フォレレ(Forelle=マス)を中心としたメニューが評判。トリップアドバイザーの「トラベラーズチョイス2020年」にも選ばれました。

しかし、建物の老朽化に伴い、2023年6月19日から一時休業。その後、修復工事を得て、2024年2月に再オープンしました。新たな店主は、30年前にこの店で修行を積んだオスマン・カヴァック(Osman Kavak)氏。Zur Forelleの郷土料理やフォレレのメニューも受け継がれています。

ウルムでおすすめ、シュヴァーベン地方ならではマス料理

リニューアルオープンしたツア・フォレレでは、メニューのバリエーションが増えました。その一方で、シュヴァーベン地方の伝統料理はしっかり引き継がれています。なお、ツア・フォレレならでは看板メニューであるマス料理は3種類。「Müllerin Art」「Blau」「Ulmer Art」の中から選べます。

Müllerin Art (直訳=粉屋風):粉屋風という名前の通り、マスを小麦粉で軽くまぶします。そして、バターで焼き上げ、レモンとパセリを添えたムニエルです。香ばしいバターの風味が楽しめます。

Blau (青焼き):新鮮なマスを酢とレモン、そして 玉ねぎ、ネギ、セロリ、フェンネルなどを使った出汁で軽く茹でます。酢の作用で魚の皮がほんのり青みを帯びることから「ブラウ(青=Blau)」と呼ばれます。さっぱりとした上品な味わいが特徴です。

Ulmer Art (ウルム風):サクッと揚げたマスに、熱々のアーモンドバターをかけていただく、ウルム特有のスタイルです。香ばしいスライスアーモンドの食感とバターのコクが白身魚のマスによく合います。

そして、もうひとつ忘れてはならない味が。シュヴァーベン地方ならではの、小麦粉と卵で作るパスタ「シュペッツレ(Spätzle)」も忘れずに。リニューアルオープンしたツア・フォレレの公式サイトはこちら

<ツア・フォレレ|Zur Forelle 基本情報>
所在地:Fischergasse 25、89073 Ulm
アクセス:ウルム中央駅からドナウ川方面に向かって900m、徒歩12分ほど


ドナウ川沿いの街、ウルムのまとめ

数あるウルムの見どころの中でも、古くからの言い伝えや伝説に彩られたスポットをご紹介しました。ウルムは、シュトュットガルトとミュンヘンのほぼ中間に位置するアクセルの良い街。さらにはユネスコ世界ジオパークに認定されているシュヴェービッシェ・アルプの観光拠点としても理想的。自然と歴史、そして、ユーモアある伝説が残るウルム。ドイツ旅行でぜひ訪れてみてください。

最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
(この記事は、2020年9月にトラベルサイト向けに執筆。その後、2023年に自身のブログへ移して追記および更新したものです。)